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星空、記憶、そして自己再構築:「天川理音」という名前の由来
2026-09-19

はじめに#

以前のウェブサイトのドメイン名は『ATRI -My Dear Moments-』から、そして現在のドメイン名は『景の海のアペイリア』から取っています。私がこの2つの作品をこよなく愛しているのは、おそらく私の魂を揺さぶる「共通のテーマ」があるからでしょう。それは、主人公が「自分が望まない身体」に生まれ落ちながらも、自分の内面にふさわしい「真実」を全力で探し求めていることです。

これは、トランスジェンダーとしての私の最初の20年間の人生そのものと言ってもいいでしょう。

2026年、ついに過去のしがらみを断ち切り、東京で新生活を始めようと決意した時、私は自分自身に新しい名前をつける必要があると悟りました。私にとっての Chosen Name(自ら選んだ名前)は、ただ辞書をパラパラとめくって見つけた響きのいい言葉であってはなりませんでした。それは厳密で一貫性のあるシステムでなければならず、表記や発音に関する数々のルールを満たしつつ、私の深いアイデンティティと未来への希望を宿すものでなければならなかったのです。

そうして誕生したのが、天川 理音(あまかわ りね / Amakawa Rine [a.ma.ka.wa ɾi.ne] です。

第一層:字形、音律、そして揃っていくピース#

名前を構想し始めた初期、私はまるで緻密な System Architectureシステムアーキテクチャ を設計するかのように、明確な「前提条件」をいくつか設定しました。

まずは、視覚的な面と Localizationローカリゼーション について。国際的な日常のやり取りの中で、私は中国語と日本語の環境を頻繁に行き来する必要があります。以前使っていたハンドルネームには、日本語特有の漢字や繁体字が含まれており、中国の友人たちが私の名前を打ち込むためにわざわざ入力法を切り替えてくれるのを見て、感動しつつも「手間をかけさせてしまっている」と痛感していました。そのため、新しい名前は簡体字、繁体字、日本語のすべてで字形が完全に一致するものでなければなりません。同時に、誰でも簡単に入力できるように、すべての文字が小学校で習うレベルの常用漢字である必要がありました。美学的な観点からは、苗字の画数が少なく、名前の画数が多い「前が疎、後ろが密」という視覚的なバランスを持たせることにしました。

次に、音律と発音について。私は、苗字の4つの音節がすべて同じ「a」の母音であり、かつ濁音を一切含まないことを絶対条件としました。これにより、発音が非常に軽快で発声しやすくなるだけでなく、「a」から始まる響きは、私が深く愛する『ATRI』や『Apeiria』の頭文字とも美しく呼応するからです。

これらの厳しい条件を抱えながら模索していた時、幸運なことに、ネット上で出会った友人たちや様々なコミュニティの仲間たちが、私に素晴らしいインスピレーションを与え、このパズルのピースを少しずつ埋めてくれました。

  • Rynco Maekawa さんの名前の構造は、Rine Amakawa という国際性と美しさを兼ね備えた全体の形を確立させてくれました。
  • 天川みずきさんのおかげで、すべて「a」の母音というルールに完璧に合致する「天川(Amakawa)」という苗字に決めることができました。
  • 雨宮澪音 さんの存在が、名前の最後を「音」の字で締めくくる決め手となりました。

これらのピースが一つに組み合わさった時、私は驚くべきことに気がつきました。それが、私の心の奥底にあった「リズム感」へのもう一つの期待に完璧に合致していたのです。私は「良い名前は歌のように口ずさめるべきだ」と深く信じています。ずっと『Summer Pockets』の空門蒼が自分の名前を歌うように口ずさむあのメロディが好きでした。

「そっらっかっど あお♪」

——『Summer Pockets』より

これこそが、まさに王道の「4+2」の音節構造です。完成した新しい名前をこのメロディに当てはめて「あーまーかーわ りね♪」と歌ってみた時、その長短が組み合わさった軽快な響きは、まさに私が切望していた完璧なフォルムでした。

第二層:記憶の繋がりと運命の反転#

字形と音律がこの名前の骨格を形成しているとすれば、そこに真の魂を吹き込んでいるのは、その背後にある願いや想いです。

「天川(Amakawa)」 は、単なる響きの良い苗字ではありません。それは私がこよなく愛するゲーム『星空鉄道とシロの旅』の舞台であり、同時にトランスジェンダー支援組織 One Among Us のアンセムである『星めぐりの歌』にも直結しています。

そして 「理音(Rine)」 という名前は、同じく『星空鉄道とシロの旅』の登場人物である 風又ねり を再構築したものです。彼女の名前は、中国語圏のファンコミュニティでは 「音理」 と訳され、親しまれています。

ねり(音理)は、この上なく愛らしいけれど、不幸にも若くして亡くなってしまう少女です。架空の物語の中で、この世を去った者の魂は、生き残る者へと生きる意志を託します。現実のインターネットの世界で、私は One Among Us Memorial Workgroup の技術責任者としてサーバーを保守し、彼女のように若くして命を落とした、胸が痛むようなトランスジェンダーの仲間たちのアーカイブを整理しています。

こうした作業をしていると、よく妙な共感を覚え、先述した『Summer Pockets』の空門蒼を思い出します。あの架空の世界で、蒼は何度も七影蝶に触れ、他者の記憶を背負って前に進んでいきました。

しかし、One Among Us の様々な活動に参加する中で、私はその存在の真の意義を深く理解するようになりました。ここは、生者と死者を繋ぐ場所なのです。私たちが逝去した仲間たちの記憶を守り、彼らが確かに存在した証を残すのは、単に追悼するためだけではありません。その重みを、今を生きる仲間たちに寄り添う温もりへと変えるためです。まだ生きている同胞を守り、残された人々が同じ轍を踏まないようにするためなのです。

この祈りを込めるため、私は名付けに際してある決定を下しました。 「ねり」の音節を逆転させて「りね」とし、さらに中国語表記である「音理」の漢字を反転させて「理音」としたのです。同時に、よくある中性的な読み方の Rion を避け、より女性らしさを帯びた Rine を選ぶことで、私自身のジェンダー表現をより確かなものにしました。

これは単なる発音上の変化にとどまりません。悲劇的な運命に対する、構造的な反転なのです。

「音理」を「理音」へと反転させることは、生者である私が立てた誓いです。星空鉄道で先に降りてしまった仲間たちへ。私はあなたたちの記憶を受け継ぎました。けれど、私は強く生き抜かなければなりません。私自身のために、そしてその力でより多くの仲間を守り抜くために。

結び:理(論理)は音(感情)に先立つ#

INTP型の私にとって、漢字の「理音」という順序は私の内面世界の写し鏡でもあります。つまり、論理と理性(理 / Logic & Reason)を、感情と声(音 / Emotion & Sound)よりも前に置くということです。

重く苦しいアーカイブを処理し、現実世界の様々な困難に直面する時、私は常に冷静さと強靭さを保たなければなりません。なぜなら、十分に堅固な「理(論理と理性)」があってこそ、脆くて儚い「音(記憶と感情)」を庇護できると知っているからです。

天川理音。 これは単なる記号ではありません。私のすべての実用主義的な構想を満たした完璧なパズルであり、何より新しい人生を抱きしめるために、私自身が書き記したお守りなのです。

初めまして、天川理音です。 今後ともよろしくお願いいたします。

星空、記憶、そして自己再構築:「天川理音」という名前の由来
https://apeiria.net/posts/naming-amakawa-rine/
筆者
天川理音
公開日
2026-09-19
権利表記
CC BY-NC-SA 4.0